君の瞳にわたしが映っても（完）

わたしは浅く息を吸うと、携帯を開いた。

ぼやけた視界に真っ先に飛び込んでくるのは、『兄ちゃん』の文字。

履歴を見ると、全部わたしからかけていて、全部着信拒否。

震える指で電話のボタンを押す。


『プルルル…プルルル…』


心臓が喉から飛び出そうなくらい怖い。


罪悪感が募って、死んでしまいたいくらい怖い。


ドアを隔てた向こう側では、まだあいつらの怒声が聞こえる。


『…何？』


数コール目、久しぶりに聞いた、低い掠れた声。


知らないうちに嗚咽が止まらなくなる。


向こうからは何も言ってこない。だけど、切ってくれていないということは、こんな妹でも相手にしてくれているということ。


「に…い…ちゃんっ…っ！」

泣いて泣いて目が乾くくらいなく。

「ごめんっ…っ、ごめん…ごめんなさいっ！」

『…は。』

「逃げてごめん…お父さんっ、任せちゃって…っ、ごめん。ひっく…裏切って、ごめん…助けれなくてっ、ごめっ…ごめん、ごめん、ごめんっ！」