君の瞳にわたしが映っても(完)


「修二!」


わたしは思いっきり笑って手を振った。



今日の夜、わたしは転勤する。きっともう高校生になるまで戻ってくることはないと思う。



修二から中学の卒業式の時第二ボタンをもらうこともないし、また二人で海に行くこともない。



修二とはたくさんの思い出がいっぱいあって、それを今日で釘をさすなんてできない。



生まれてからずっと、気づけばそばに修二がいた。



一番の友達ではなかったけれど、幼稚園の時だって振り向けばどこかに修二がいて、小学校の時も廊下を覗けばどこかに修二はいた。


常に、修二はわたしのそばにいたんだ。




「今日で、お別れだな、玲…」



そうつぶやく修二はいつもと違ってなんだか寂しそうで。


その時の彼の悲しそうな表情は、わたしの小学六年生の恋心をくすぐ
るには十分だった。

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