君の瞳にわたしが映っても(完)

「ふふっ…」

わたしは思わず笑った。


「無理して笑うな…前みたいに。」


「あはっ…」


彼女のいる片思いの相手に、わたしは今、抱きしめられている。


不思議だなあ。


遠い、遠い人だったはずなのに、今、彼は、わたしのことしか見ていない。


これって…期待してもいいのかな…?


ねえ、修二?



「無理してなんかないよ…?」



わたしはかろうじて体を少し動かして、修二の顔をみようとした。


だけど修二はそれさえも許さず、強く抱きしめてくる。


だからわたしはもう一度大きく息を吸っていった。



「無理してなんかない。嬉しいから、笑ってるんだよ。」



< 166 / 272 >

この作品をシェア

pagetop