君の瞳にわたしが映っても(完)
その時、頰にかかっていた髪の毛がぱらっと落ちた。
「っ!」
修二は目を見開いて、そっとわたしの頰に手を伸ばした。
「お前…っ。」
わたしは修二がわたしの頰にそっと触れるのを見て、やっと思い出した。
わたし、殴られたんだ。
それを意識した途端、体の節々の痛みがもっと強くなって、わたしは思わず顔を歪めた。
「大丈夫か…?って、んなわけねーよな。」
修二は心なしか声に怒りを含ませているような気がした。
「お前を殴ったやつ…許さねーっ。」
修二は眉間にしわを寄せて、見えない敵を見ているような表情をした。
久しぶりに聞いた、修二の低い、自分までもビクついてしまうほどの怒った声。
白石さんの時も、この声を出したの…?
だったらわたし、泣いちゃうよ…
だってずっと、この声は…わたししか聞いたことがなかったから。
そして次の瞬間さあっと青ざめた。
「お前…まさか…襲われてねえよな?」
「多分…ね。」
そう答えると、修二は怒りに震えた。
「後で全部聞かせろよ。」
そう言って修二はわたしの膝の下に腕を入れた。
修二がこれからしようとしていることを悟り、わたしは少し不安になった。