君の瞳にわたしが映っても(完)

兄はその頃中学三年生だった。


一番難しい時期だ。


千葉に住んでいた時は、兄は学校のほとんど全員と顔見知りで、



幼稚園の時から仲が良かった子も多かったため、



兄の気弱な性格もみんなちゃんと心得ていて、そんな兄を好いていた。



しかし転勤先の中学校ではみんなが初対面で、気弱な兄がいじめの対象になるのにはそう長く時間はかからなかった…



初めてあにのいじめに気づいたのは、学校に通い始めてから一ヶ月がたった頃だった。



家に帰ってきた兄は、泥だらけになっていて、身体中負傷していた。



「兄ちゃん?!?」



そばに駆け寄ると、兄ちゃんはわたしを初めて振り払った。



「玲には関係ない!」


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