君の瞳にわたしが映っても(完)
夜な夜な出かける兄が心配で、わたしは何度も兄がいる溜まり場に夜遅く足を運んだ。
いつもみたいに、わたしが兄を守ってあげないといけない、という衝動に駆られた。
しかし、兄にこっそり付いて行くたびに、兄の周りの集団に絡まれた。
その中でも兄をその暴走族に誘った篠原龍之介さんはとても悪質な男で、常に彼からわたしはひどい言葉を浴びさせられた。
それでもわたしは諦めきれず、いつの間にか夜中に家を抜け出すのが日課になっていた。
周りから見たらひどい兄かもしれない。
暴走族に加わり悪さをする奴らを止めないで見てるなんて、世間的には考えられないくらい恐ろしい行為だ。
だけど、わたしは兄が大好きだった。
嫌いになんて絶対になれなかった。
だって…
わたしが周りに絡まれるたびに、
兄がみんなに頭を下げてわたしを守ってくれたから。
そしてその度に、
兄は殴られ、けられた。
自分の『仲間』から、ひどい仕打ちをされた。
それも、全部、わたしのために…
そんなことをされても、兄はわたしを一度として見捨てたことはなかったんだ…
兄を助けられない自分が嫌で、お父さんの力になれない自分が憎くて、高校に入ると同時にバイトを始めた。
そして、何もできない自分から逃げたくて…