君の瞳にわたしが映っても(完)
一緒に暮らし始めてから約一ヶ月。
まだ、ちゃんと解決していないような気がする。
心のどこかに何かが引っかかっている。
「親父にお前を迎えに行けって頼まれた。」
わたしの目を見ないで兄ちゃんは歩み寄ってくる。
「お前にはいい迷惑だろうけど。」
ぼそっとつぶやく兄ちゃんの耳には、ピアスの入っていない穴が何個も空いている。
なんども色を変えて傷んでしまったけれど、それでも兄ちゃんの元の黒い髪が風で揺れる。