君の瞳にわたしが映っても(完)
わたしはそんなことを巡らせながら作業を続けた。
ふと、手元が見えなくなってわたしはやっと顔を上げた。
朱色の空はどこかに消え、かわりに墨色の空間が窓の外にずっと続いている。
疲れた…
わたしは大きく伸びをすると、一度作業を中断した。
もしこの作業がなかったら…チェーン店にでも行っていたのかな。
「ははっ。」
乾いた笑みが浮かぶ。
そんな時、また白石さんの『ありがとう』っていう言葉が浮かんだ。
いやだ、いやだ…っ。
ありがとうなんて言われる筋合いはない。
わたしは感謝されちゃいけない人間なのに…
なのに…
嬉しかった自分がいた。