君の瞳にわたしが映っても(完)
「で、相川の方こそ何してんの。」
しばらくの沈黙の後、わたしは向かいに座る相川に声をかける。
顔を上げた相川と絡み合う視線に心臓が加速する。
キリッとした奥二重の瞳とか、
だるそうに背を丸めているくせに、わたしのために作業をしてくれているところとか、
意外と長い睫毛とか、
まくりあげた袖から見える、血管の浮き出る筋肉質な腕とか、
全てがかっこいいんだ。
全てがわたしの血の巡りを加速させるんだ。
だからなるべく冷静を装う。
「あー…まあ、色々とあって?」
相川は口門をあげて困ったように笑う。
「もしかして…白石さんの…こと?」
ああ…なんでわざわざ自分からそんなことを…
だけどわたしの口は止まらない。
「昨日白石さん泣いてたからさ、なんかあったのかなあって…思って…さ。」
何があったのかは知ってるけど、あえて相川の反応を見たくてこんなことを言う私は本当にバカだ。
知ってるに決まってるじゃん、彼氏なんだから。
彼女は彼氏に頼りたくなるもんでしょう?
白石さんだって、きっと相川に守られたいんだよ、きっと。
わたしなんかがそばにいて、それでありがとうって言われるのは、やっぱり間違ってるよ。
相川でしょう?白石さんが必要としているのは?