君の瞳にわたしが映っても(完)
「橘。」
後ろから聞きなれた声がかけられ、わたしは思わずビクッとした。
振り向かなくてもわかる。だってわたしはこの声に毎回ドキドキさせられてるから。
低温で、少しだけぶっきらぼうな声音。
ああ…ダメだな、わたし。ここまで好きだと…切ないよ。一度この声が自分に向けられたら…逃げられないことを知ってるから。
大きく息を吸って気持ちを整えると、わたしは振り返った。
「昨日はサンキュ。」
背後には、予想通り目を細めて微笑む相川がいた。
「お前のおかげで一応あいつらに一言いうことできたわ。」
「わたしは、別に。」
「いや、助かったわ、マジで。」
「そっか。」
どうしてもそっけない返事しかできない自分がいやだ。
彼女のために頑張るのは、普通のことじゃん。
なのに自分ときたらひねくれていて、だめだなぁ。