君の瞳にわたしが映っても(完)
「ねえ、相川!」
「…」
相川は何を考えているのかわからない表情で、どこか一点を見つめている。
決してわたしと目を合わせようとしない。
そんな相川に腹が立って、わたしはなおも言い募った。
「相川!わたしの話聞いてんの?」
眉間にしわを寄せた相川のイラつきが、張り詰めた空気から伝わってきた。
そして顔を上げた相川は、冷めた視線でわたしの目を捕らえた。
「はあー…。彼氏の俺がいいっつってんだからいいだろ。別に俺がお前のことを好きってわけでもねえんだから、ただのダチとして礼してるだけじゃん。」
っ…。
相川は、わたしが君のことを好きってことを知らないから、平気でそんな残酷なことを言える。
その言葉が、どれだけ深くわたしの心臓をえぐったか、きっと彼は知らない。
好きになんてなりたくなかった。
わたしはきっと、少女漫画のヒロインを苦しめるライバルで。
そのライバルの結果はいつだって同じなんだ。
王子様はいつだって素直で純粋な女の子を好きになる。
いつだって物語には、決まったハッピーエンドがある。
それを邪魔しているのは…誰?