君の瞳にわたしが映っても(完)
「橘、お前は別に…、」
「ううん。謝らないと、わたしもおかしくなっちゃうから。」
君ならそう言うと思ってた。
だって、わたしが惚れた男だもん。
わたしは小さく微笑んだ。今回のは、心からの笑みって言えるかもしれない。
「っ…。」
気のせいだろうか。相川が一瞬だけ目をそらしたような気もした。
「この前は、お礼にカフェに連れて行ってくれてありがとう。わたしの考えすぎだったみたい。」
「っ…でも、お前の言葉で目が覚めた。」
相川はまた、わたしのことを真っ直ぐに見つめてくる。
「これからは、ちゃんと行動に気をつけようと思う。」
自分で言ったことなのに、胸が痛んだ。
だって、それは相川がこれからは自分には恋人がいるってことを、意識するようにするって、いう、ことだから。
「これからも、友達としてよろしくな、橘。」
「うん、相川。」
やっぱり苗字読みだけど…すこし、ほんのすこしだけ、距離が縮んだような気がしないでもなかった。