夏のキミは、まぼろし
2.失礼なキミ
 補習が終わるとみんなぞろぞろと出口に向かう。

 そしてそのまま街に遊びに行くのだ。
 補習に来ている意味なんて全くないに等しい。

 片隅のキミは外を眺めたまま。

「ねぇ。美緒、今日さ。」

「あ、うん。何?」

 この後、新山くんはどこで何をしてるんだろう。

 そんなことを考えてしまう。
 おかげで私は上の空。



 上履きを靴に履き替えて昇降口を出た。

「…ゴメン!忘れ物しちゃった!
 先に行ってて!」

「もう美緒はおっちょこちょいなんだから。
 分かった行ってるね~。
 いつものカラオケだから!」

 彩香の返事をよく聞きもせずに私は来た道を舞い戻る。
 ちょうど教室から新山くんが出て行くところだった。

 新山くんは私を見てまた鼻先で笑った気がして、どうしてこんな人を見に来ちゃったんだろうって気持ちが押し寄せる。

「疲れない?」

 彼はそれだけ言って去っていった。
 その言葉が耳にこだまする。

 ツカレナイ?



「ねぇ!美緒どうしたの?元気なくない?」

 後から合流したカラオケ。
 つい意識が別にいってしまう。

「あの…つか…風邪気味なの。
 ゴメン帰るね。」

「そっかー。お大事にね!」

 大騒ぎする音から逃れるように部屋を出た。
 思わず口から出そうになった「疲れてて」の言葉を飲み込んだ。

 新山くんに言われた通りの発言するなんて…。

 新山くんに心の中を見透かされていた気がして嫌な気持ちになりそうになると頭を振る。
 美緒はその言葉を忘れようと懸命に努力した。

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