夏のキミは、まぼろし
3.キミが気になる
 いつ来ても彼は補習に来ていて、いつも気怠そうに窓際で外を見ていた。

 そして誰に合わせるでもなく、帰りにどこに行くのか、知る人も興味がある人もいなかった。

 ただ美緒を除いては。

「ゴメン。今日は用事があるから、みんなは遊びに行ってよ。」

「なーんだ。つまんない。
 明日は行こうねー。」

 手をひらひらさせて教室を出て行くいつも遊ぶメンバー達。
 1人、また1人と帰っていき、教室には美緒ともう1人だけ。

 彼は無言で立ち上がると出口に向かう。

「あの!…あの……。
 いつも補習のあとはどこに行くの?」

 やる気のない顔が振り向いた。

「別に。」

 この人、人に合わせるとかしないんだろうか…。

「ついてくる?」

「え?」

 誘われたのかよく分からないまま、新山くんの後を歩いた。

 昇降口とは逆方向に迷いなく進んでいく。
 階段を降りるどころか上がった先は…。

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