あたしが彼に惹かれた理由
──あたしは、彼が好きだ。



たしかに、豊田くんはかっこいい。
性格も素敵だ。

でも、そこじゃない。

見かけによらず、本なんて読んでて。
それでいてとても整った字をしていて。
あたしはこの字にずっと惹かれてたんだ。

そんな惹かれてた相手がいま目の前に急に登場したんだ。



「豊田くん……」


「ん?」


「その本、あたしも好き」


「……え?」



彼が目を見開く。



「豊田くん?」


「いや、この本好きっていう人に初めて会ったっていうか……俺の読む本を好きって人になかなか出会わないから嬉しい」



無邪気に笑った。

その笑顔にあたしの心臓は素直に跳ねが上がる。



「豊田くんの周りの子達はどんなのが好きなの?」


「いや、マンガ……」


「マ、マンガ!」



予想外の返事にただただびっくりする。



「俺のキャラじゃないだろ?」



切なく笑う。

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