あたしが彼に惹かれた理由
「キャラじゃないなんて……」



少しでも豊田くんとの共通点を残しておきたい。
だから、彼には読むことをやめてほしくない。



「笑われたんだ。昔」


「え?」


「好きだった子に。俺のキャラじゃないよ、そんなのって」



思い出しているのか遠い目をする。



「そんなの、誰がなにを好きでもそれはその人の自由じゃん」


「だよね、今はそう思えるよ。でも、あの時はやめたんだ。読むことを」



視線を本に落とす。



「……やめた?」


「うん。でもね、その子は違うやつを好きだったんだよ。笑えるだろ」



ため息をついて、ぎゅっと本を握る。



「笑わないよ。純粋な思いじゃない……でも、本に戻ってきてくれてありがとう」


「……え」



あたしの言葉に彼はまた目を大きく見開く。



「ん?」


「ありがとうなんて言われると思ってなくて」



照れたようた頭をかいた。

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