あたしが彼に惹かれた理由
「だって、こうして豊田くんと話せるのは戻ってきてくれたからでしょ?」


「そう、だね」



自分がこんなことを言えるなんて思ってもいなかった。

でも、思ったことを正直に言っただけ。
本にまた向き合うことをしてくれたから、こうしてあたしは豊田くんと向き合えてる。

彼が本に向き合ってくれてなかったら、感想も書いてくれてないから。
あたしが彼の字に惹かれることもなかったんだ。



「そっか……いいのか」



少し嬉しそうに呟く。



「うん、いいんだよ」


「俺さ、今の仲間たちの誰にも言ってないの。嫌われるのが嫌で」



いつもみんなと仲良くしてる豊田くん。
豊田くんの心の奥に触れた気がする。



「そっか……」


「それに、ずっと引きずってんだ。そいつのこと」


「まだ、好きなんだね」


「……うん」



彼の気持ちが自分にないことなんて当然知っていた。

だから傷つくことなんてないはずなのに。
やっぱり胸が痛い。

< 7 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop