are you there?
「何これ?」
「おまじない。」
「あんたが、夜1人で寝るの怖いって言ってたとき、
幼稚園くらいの頃、俺、英語教室行ってたから、これ言われたら、いつでもどこでも返事するっていう。」
「覚えてない、そんなの。」
「じゃあ、あれは?
手袋さ、かたっぽずつ交換してさ、名前どっちか分かんないようにして、誘拐犯がきたとき困らせちゃおとかってしてたやつとか。」
「してないよ、そんなこと。」
「したよ…
じゃあって言おうとして、小田原は口をつぐんだ。
そして、また私が最初、屋上に来たとき見た姿と同じように、地面に寝そべった。
「空ってさ、全部繋がってるって信じらんないよな。」
「じゃあ、信じなければいい。」
信じたいのよ、俺は。そう言って小田原は目を閉じた。
「信じないだろうけど、どこにいても、返事しようって思ってたんだよ、俺。
そこにいますかってお前に言われたら、どこにいても1番に、泣き虫のお前が泣かないように返事しようって、あの頃。」
何も言わないで、立ちすくんだ私の横で小田原は喋り続けた。
「海外転勤、親父の。
家族全員で、ついて行くことになった。」
「そっか。」
「ほんとに覚えてない?」
小田原が、小さい頃泣くのを我慢するときにする顔を今、見てしまった。
何を?そうとぼける前に、目から水滴が落ちそうになって、慌てて私も、地面に寝転んだ。
「芽依はさ、かわいいでしょ、」
返事をしない小田原に念をおす。
「かわいいでしょ。」
「…うん。」
「かわいい上に優しいから、こっちが心配になるくらい。芽依にはいっぱい救われた。」
でも、
「恩返ししたくても、芽依はさせてくれない。頼ってほしくても、芽依は頼ってくれない。その上、芽依は自分に自信がない、
小田原だけなんだよ。小田原だけが芽依の頼れる場所になれるんだよ。」
小田原は小さく笑った。
「分かったよ、芽依のとこ行くよ。」
そう言って、起き上がって、服に付いた埃を払った。
「じゃあ、また
ドアの近くで、手をあげながら、小田原が言った。
「俺の彼女は芽依だし、大切なのも、1番なのも芽依だけど、ホントはお前が泣き虫なのも、怖がりなのも、俺知ってるから、特別におまじないの有効期限は無期限にしてやるよ。」
10メートルにもみたないその距離が永遠に見えた。
「いらないよ、そんなの。」
「もらえるもんは、もらっとけよ。」
そう言って、小田原が笑った。
「じゃあ、一回だけもらう。そのおまじない。」
おう、ただ一言そう言って、扉が閉まった。
ガチャン、その一音が私の心を冷たくさせた。
「おまじない。」
「あんたが、夜1人で寝るの怖いって言ってたとき、
幼稚園くらいの頃、俺、英語教室行ってたから、これ言われたら、いつでもどこでも返事するっていう。」
「覚えてない、そんなの。」
「じゃあ、あれは?
手袋さ、かたっぽずつ交換してさ、名前どっちか分かんないようにして、誘拐犯がきたとき困らせちゃおとかってしてたやつとか。」
「してないよ、そんなこと。」
「したよ…
じゃあって言おうとして、小田原は口をつぐんだ。
そして、また私が最初、屋上に来たとき見た姿と同じように、地面に寝そべった。
「空ってさ、全部繋がってるって信じらんないよな。」
「じゃあ、信じなければいい。」
信じたいのよ、俺は。そう言って小田原は目を閉じた。
「信じないだろうけど、どこにいても、返事しようって思ってたんだよ、俺。
そこにいますかってお前に言われたら、どこにいても1番に、泣き虫のお前が泣かないように返事しようって、あの頃。」
何も言わないで、立ちすくんだ私の横で小田原は喋り続けた。
「海外転勤、親父の。
家族全員で、ついて行くことになった。」
「そっか。」
「ほんとに覚えてない?」
小田原が、小さい頃泣くのを我慢するときにする顔を今、見てしまった。
何を?そうとぼける前に、目から水滴が落ちそうになって、慌てて私も、地面に寝転んだ。
「芽依はさ、かわいいでしょ、」
返事をしない小田原に念をおす。
「かわいいでしょ。」
「…うん。」
「かわいい上に優しいから、こっちが心配になるくらい。芽依にはいっぱい救われた。」
でも、
「恩返ししたくても、芽依はさせてくれない。頼ってほしくても、芽依は頼ってくれない。その上、芽依は自分に自信がない、
小田原だけなんだよ。小田原だけが芽依の頼れる場所になれるんだよ。」
小田原は小さく笑った。
「分かったよ、芽依のとこ行くよ。」
そう言って、起き上がって、服に付いた埃を払った。
「じゃあ、また
ドアの近くで、手をあげながら、小田原が言った。
「俺の彼女は芽依だし、大切なのも、1番なのも芽依だけど、ホントはお前が泣き虫なのも、怖がりなのも、俺知ってるから、特別におまじないの有効期限は無期限にしてやるよ。」
10メートルにもみたないその距離が永遠に見えた。
「いらないよ、そんなの。」
「もらえるもんは、もらっとけよ。」
そう言って、小田原が笑った。
「じゃあ、一回だけもらう。そのおまじない。」
おう、ただ一言そう言って、扉が閉まった。
ガチャン、その一音が私の心を冷たくさせた。