彼の笑顔に出逢いたい
駅周辺にある居酒屋チェーン店なんて、実際何店舗もある。


だけど、後で店の名前を思い出したらしい片桐先輩が口にしたその店の名前は、非常に残念なことに私のバイト先と同じ店名だった。


つくづく、縁があるのかないのか…


まだ隣で寝ている彼の寝顔を思わず、直視して眺めてしまった。


起きてたら絶対にできないけど、寝てるなら文句を言われる事もない。


車は既に山道に入っていた。


外は五月晴れの青空が広がっていた。


今は、車の上を覆うように生い茂る木々でよく見えないけど、木々の葉の隙間からは眩しいほどの陽の光が差し込んでいた。


車が急カーブに差し掛かり、シートベルトをしていなかった無愛想男の体がその遠心力で私の方に倒れこんできた。
< 32 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop