彼の笑顔に出逢いたい
「バーカ、お前とは違うんだよ。」


彼はそう言って、空いていたチェアに座った。


私はどうしよう。


居心地の悪さを感じ、川でまだ釣りを楽しんでいるめぐの方へ行こうとした私に背中から声がかけられた。


「花乃ちゃん、大丈夫だった?」


振り返ると、心配そうな顔をした奈緒さんと目が合った。


「濡れて着替えてきたんでしょう?」

「あ、はい。…結城さんにはご迷惑かけちゃいましたが。」

「そんな事気にしなくても大丈夫よ。晴も小さな妹がいるからか、昔っから子供の面倒見だけはいいしね。」

「あ…そうなんですか…。」


今の言葉に棘を感じたのはきっと気のせいじゃない。


現に今、私自身も小さな子供と同じカテゴリーに入れられたのだから。


それに笑ってそう言ったはずの奈緒さんの目は、決して笑ってはいなかった。
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