彼の笑顔に出逢いたい

翌日バイトに行くため寮を出ると、タイミング良く寮から出てきた結城さん。

彼を目にした瞬間、緩む頬。


「今日もよろしくな」


私を見てそう言いながら笑いかけてくれる彼に、もしかしてこのままバスで一緒に行けるのかと一瞬喜んだのに、彼の足はそのまま駐輪場の方に向かってしまった。

じぃーっと無意識にその背中を眺めていたことに気づかれたのか、不意に彼が振り返る。


「なんだよ…」


と、いつものようにぶっきら棒な言い方で。


でも以前のようにもう無愛想で嫌な奴だとは思わない。


どんな言葉でも、彼の視界に入れてもらって相手にしてもらえるだけで嬉しいと思う自分がいた。


「べ、別になんでもありませんよ。」