イジワル上司の甘い毒牙
「……私も」
おずおずと、重たい口を開いてそう言えば、日高さんは聞こえないと言うように、首を傾げた。
「私も、なに?ちゃんと言って」
「うっ……意地悪」
「君だけにね」
恥ずかしがれば恥ずかしがるほど、この男は嬉しそうに笑うからタチが悪い。
それが嫌じゃないのは、私も相当この人に毒されている証拠だった。
「……嫌いじゃ、ない、です……」
言い終わって、赤くなった顔を隠すように手で覆えば、その手のひらに柔らかくて温かいものが触れた。
「及第点」
驚いて、指先の間から向こう側を見ようとして開けば、日高さんの顔がすぐ近くにあって、心臓が飛び跳ねる。