イジワル上司の甘い毒牙
三時のおやつの時間が過ぎた頃――場所は会議室。私はたくさんの役職のついた人達の前で後期のプロジェクトに向けて作成したプレゼンの発表をしていた。
数名のプロジェクト案から実用性やコスト、実現できるかなどの観点から優れたものを選出し、選ばれた人がプロジェクトリーダーとなりプロジェクトを進めていく。
他所の会社ではどういうやり方なのかは知らないけど、うちの会社はいつもこうだ。
大体いつも採用案は上のお気に入りの社員のものなる。どうせ今回も私のは没案だろうなと慣れきった感覚でプレゼンを終えた。
いつも通り全ての発表が終わりその場で採点、審議が始まる。
審査員の中にはあの忌まわしい日高 春人もいて、発表一つ一つに的確な批評とアドバイスを挙げていく。
日高 春人に任せておけば間違いはない。
それが上層部の口癖だ。つまりは全ての発言権と決定権は彼にある。頼むから余計なことを言わないでください。
「個人的には佐倉さんの案が良いと思うのですが」
――言った。言いやがった。
何の因果か日高さんの隣に座ることとなっていた私はバッと首がもげそうな勢いで彼の方を向いた。
冗談じゃない。私がプロジェクトリーダーだなんて務まる器じゃない。
それにいくら人望の厚い日高さんが推薦したとしても、私のようなポンコツな人材のプロジェクト案なんて通るわけがない。