イジワル上司の甘い毒牙

晴れた日は決まって、昼休みに女性社員の溜まり場となる会社の敷地内にある広場で昼食を取ることにしている。青い空の下で陽の光を浴びながら食べるご飯は最高だ。

それなのに、私の今の気分は最低最悪。何故なら私の座るベンチの隣に先程ランチを断ったはずの上司、日高春人が座っているからだ。


「いい天気で気持ちがいいね、佐倉さん」


陽だまりのような朗らかで爽やかな笑顔を見せる男が眩しくて、私は目を細めた。

あなたがいなければ私にとって完璧なランチタイムだったんですけどね、と言いかけて口をつぐんだ。

どうせこんな嫌味を言ったところでまた笑顔で返されて、更に腹が立つだけだ。さっさと食べてオフィスに戻ろう、と思ってお弁当箱のフタに手を掛けてあることに気が付いた。


「……日高さん、お昼ご飯それだけですか?」


彼の手元にあるのは二切れ入りのサンドイッチに、コーヒー。とてもではないが、成人男性が必要な摂取カロリーを満たしているとは思えない。


「え?そうだよ。元々食事とか、そんなに摂る方じゃないし……それがどうかした?」


嘘をついているわけではないようで、当然のように日高さんはそう言ってサンドイッチを開封し始めた。


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