イジワル上司の甘い毒牙

悪い予感は的中するもので、オフィスに戻り仕事を再開しようと筆箱を漁るっていると、指先に鋭い痛みが走った。


「痛ッ……」


思わず指先を引っ込めると、人差し指に赤い線ができていた。

そこからじわじわと同じ色の液体が流れ出てくる。慌てて筆箱の中を見ると、入れたはずのないカッターの刃が入っていた。


誰がこんな中学生のいじめのようなことをするんだ、と思い顔を上げてオフィスをぐるりと一望する。

私のデスクでだけこんな非日常な事が起きているのに、オフィスの中は普段通りだった。

ティッシュを手に取り傷口を包み込んでぎゅっと握り締めた。やけに脈拍が速いのは血を見てしまったショックだろうか。


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