イジワル上司の甘い毒牙

「それからこれ。何か役に立つかと思って過去のプロジェクト資料とか軽くまとめてきたから。使えそうなとこがあったら使って」


コーヒー牛乳を渡すついでとでも言うように、日高さんは広辞苑ほどもありそうな紙の束を私のデスクの上に置いた。

重量感のある音が響いて、私は目を白黒させた。


「軽く……これが軽く!?」

「?うん」


彼が持ってきたという膨大な量の資料を目の前にして、私は軽く引いていた。


「こ、これまとめるのにどれくらいかかったんですか……?」


通常、パソコンのデータとして残しておくことができないほど古い過去のプロジェクト資料は、資料室という名称の倉庫にファイリングされて収納されている。

その中から必要なものだけを抜き取り、まとめるには相当な労力がいるだろうに……。


「うーん?一時間もかかってない、かな?」


日高さんは少し考える素振りを見せたかと思うと、あっけらかんとそう言った。

そっと何枚かページをめくって目を通すと、ところどころに付箋が貼ってあり必要になりそうな部分などが均等の取れた文字で記載されている。


「……どういう、風の吹き回しですか」


出会ったばかり小娘にこんなに親切にしてくれるものなのか?何か裏があるのではないかと、どうしても疑ってしまう。

恐る恐るそう聞くと、日高さんは少しだけ気に障ったのかぴくりと眉毛を動かした。


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