イジワル上司の甘い毒牙
「じゃあ俺の初恋の話でもしようか」
突然投下された爆弾に、私は身構える。
「な、何ですか急に……」
「女の子って恋愛の話好きでしょ?」
日高さんの思い浮かべる不特定多数の女子と一緒くたにされたことはちょっと不満だけど、日高さんの初恋の話はちょっと聞いてみたいので私は黙り込んだ。
その沈黙を肯定と受け取ったらしい日高さんはそっと目を伏せて、ゆっくりと口を開いた。
「俺、高校の時バスケやってたんだ」
背が高く、手足も長くて全体的にすらりとしたスタイルだからなんとなく想像ができる。
あと、私も高校時代バスケ部だったんだけど、まあそんなことは今の流れには関係がないから黙っておこう。
「こう見えて結構負けず嫌いでね。どうしても県大会を突破できなくて悩んでた時とか、支えてくれた女の子がいたんだけど」
口ぶりからすると、その女の子はマネージャーか何かだろうか。
バスケ部のイケメンと可愛い女子マネのカップルは定番というか、自然の摂理な気がする。
そこからいくつかの高校生ならではの甘酸っぱいエピソードを語ったあと、日高さんはどこか遠い目で最大のオチを静かに口にした。