イジワル上司の甘い毒牙
無自覚の恋心

私の人生において最大にして最悪の出来事。

日高春人との同衾事件の日、私はショックのあまり寝込んでしまった。本当なら仕事を休んでいる暇なんてないんだけど、あまりにも体調が悪すぎて働いてる場合ではなかったのだ。


一応私の上司にあたる日高さんが、どうにか私の急な有給休暇を通してくれたみたい。ていうか原因がこの人なんだけど。

病院で脳貧血と診断を受け、鉄分のサプリメントを飲んで一日療養したから、すっかり体調は良くなった。

気分はあまり良いものではないけど、二日も続けて仕事を休むわけにはいかず、私は重い足取りで会社に向かったのだった。

そして。

「佐倉さん、日高さんと付き合っているの?」


出勤早々、若い女子事務員達に囲まれて、私は白目を向いていた。

話を聞くところによると、日高さんのストーカー……いや、熱烈なファンが、日高さんが私を抱きかかえて自宅に入っていくところを目撃したそうだ。

証拠と言って、ご丁寧にその写真まで見せられて私は背中に冷や汗をかく。


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