イジワル上司の甘い毒牙
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最終チェックからリハーサル、プレゼンの準備が終わり、緊張しながら私は昼食に喉を通していた。
こんな時こそ日高さんに他愛もないことを話しかけてもらって、気を紛らわせて欲しいのに。あの人は会議が長引いているらしく、朝から姿を見せていない。
いつものように会社の敷地内にある広場のベンチに座ってお弁当の中身をつついていると、少し離れた場所から同じ部署の同期が慌てた様子で私の名前を呼んだ。
「佐倉さん!」
男性社員のあまりの焦りように驚いて、私は口に運びかけていた玉子焼きを取り落としてしまい、弁当箱の中を転がった。