イジワル上司の甘い毒牙


「身の程知らずよね。あんなブスが日高さんと付き合えるわけないじゃない」

「いやいや、後押ししたのはアンタでしょ」

「日高さんってば気を遣って"俺よりもっと良い人がいると思う"ってやんわり断ったんだって。優しいわよねぇ」


女子って怖いなぁ。表向きは仲良くして情報だけ得て、こうして仲間内に言いふらして悪口大会だもん。


空になったコーヒー牛乳の紙パックを握り潰して、私は先ほどのことを思い出す。

『ったく、誰があんなブスと付き合うかよ』


普段の彼からは想像も出来ないほどに低く機嫌の悪そうな声と、不快そうにひそめられた眉根。見間違い、聞き間違いであって欲しい。あるいは白昼夢を見ていたとか。


「そういえばこの前、転びそうになったのを日高さんに支えてもらったのよ!もうめっちゃかっこよかった!」

「えーずるい!」


そう、そうだ。白昼夢に違いない。

日高春人は誰から見ても善良で、正統派の王子様なのだ。


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