イジワル上司の甘い毒牙
「発表、俺に任せてくれる?」
彼に触れられることにいつの間にか嫌悪感を抱かなくなっていた自分自身に驚いていると、耳を疑うようなことが聞こえてきて私は眉を八の字にした。
確かに、日高さんは原稿作成の時親身になってアドバイスをしてくれたから、ある程度の内容は把握しているだろう。
それでも、あれだけの量をチェックのために目を通しただけの人が覚えているとは到底思えない。
「でも……」
断ろうと声を上げかけて、口を手で塞がれた。
「俺を信じて」
そう言ってふわりと甘く笑った日高さんに、胸の奥がじわりと痛んだ、気がした。