イジワル上司の甘い毒牙

「資料等の紛失、破損を見越して準備が出来ていなかったのは私です。それに関しての対応も自分で出来なくて、申し訳……」
「佐倉さんは悪くないと思うけど?」


私の言い訳と謝罪の言葉を、日高さんは迷いのない真っ直ぐな声で遮った。

「でも……」


「佐倉さん自身の失態でああなったって言うなら、わかるけど。そもそも、佐倉さんがそんなミスするとは思えないし」


仕事に関して、スピードを重視してミスをすることが一番時間のロスになると思っている私は、職場にいる時は何をするにも注意深く、丁寧を心掛けている。

物を一つ置く時だって、しっかり置いたのを確認してから置くし、確かに私自身の手で「うっかり」で資料を破損させることはまずない……はずだ。


「……何で言い切れるんですか」


また可愛くないことを言ってしまったけれど、日高さんは大して気にした様子もなく、長机を所定の位置に置いて、こちらを振り向いた。

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