イジワル上司の甘い毒牙
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オフィスから出て、右の廊下の突き当りにある談笑スペースで、私は一人紙コップのココアを飲んでいた。
お釣りがポケットにきちんと入っていることを確認して、最後の一口を飲み干す。後でちゃんと、日高さんに返さなきゃ。
「……そろそろ戻ってもいいかな?」
終業時間が迫って来ているので、デスク周りの整理をして早く帰りたい。
五分、と言われていたけど、どのくらい時間が経ったのか、計測していないから分からない。
もう戻ってもいいだろうかとオフィスの方に向かって歩いていくと、何故だか、女子達のすすり泣く声が聞こえてきた。
「すみません、私達が……やりました」
涙声で告げられた言葉に、私は何のことだ、と足を止めた。
「謝るのは、俺に対してじゃないと思うけど」
次に聞こえてきた、聞いたこともない日高さんのひどく冷めた低い声に、まるで自分が責められてる気分になって、私はその場で身体を縮こませた。