イジワル上司の甘い毒牙
「だって、日高さんと佐倉さん、仲が良いから、邪魔したくて……」
「あ、そ。理由は何でもいいけど、今回みたいに仕事に支障をきたすようなことを故意にするなら、相応の覚悟はしておいてね」
そこまで聞いて、恐らく日高さんは資料をダメにした犯人の目星が付いており、釘を刺すために私をオフィスから遠ざけたんだろう。
そういえば、うちの会社は至る場所に監視カメラを設置してるのに、よく嫌がらせなんて出来るなぁ、と関心してしまった。
恐らく証拠に基づいて追及されてしまったことで、彼女達は泣く泣く白状したのだろう。いや、泣く泣くというか、泣きたいのはむしろこちらですけど。
「次はないから」
背筋も凍るような冷たい響きに冷や汗を流していると、オフィスの扉が開かれて私は固まった。
「あ……」
「佐倉さん」
驚いて見開かれた日高さんの瞳と、私の瞳がぶつかった。別に悪いことをしたわけじゃないけど、なんとなく気まずくてぎこちなく笑ってしまった。