イジワル上司の甘い毒牙

「っ、ご、ごめ……」


よほど口を開きたくないのだろう、唇を噛む仕草がギリギリと歯ぎしりに変わって、しばらくしてから何かを振り払うように、女の人は髪の毛を揺らして首を横に振った。


「申し訳ないなんて思ってないけどっ!今までごめんなさい!」
「え!?」


恐らく私に嫌がらせをしていた、そのリーダー的な存在なのがこの人なんだろう。次いで、後ろに控えていた女性社員達が口々に謝罪の言葉を口にする。

私や彼女達に全く関わりのない、仕事に真面目な社員達が、少しだけこちらに興味を示して視線をやるけど、すぐに仕事を続行するためパソコンに視線を戻した。

助けを求めるようにオフィスを見回してみたけど、誰もが視線を合わせてはすぐに逸らしてしまう。

私は諦めて、真っ直ぐに女性社員を見上げた。

泣き腫らしたのか、うさぎのように真っ赤な目元に私は驚いて口を開けたまま固まってしまう。

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