イジワル上司の甘い毒牙
「でも、個人的な嫌がらせはともかく、仕事のことを邪魔されると困るのでやめてほしいです」
「うっ……それは、悪かった、わよ……。もうしない。約束するから」
「はい」
本当に反省しているらしく、しょんぼりと肩を落とす女性社員達に苦笑いをする。
そのタイミングで、オフィスの扉の近くのデスクで仕事をしていた男性社員が、声を張って私の名前を呼んだ。
「佐倉さん、日高さんがいらっしゃってます」
「は、はい!」
ちょうど、話題の人が私を訪ねて来たらしい。
少しだけ気まずく思って女性社員達の方を見ると、目を細めて恨めしそうにしながらも各々、デスクに戻っていった。
ほっと安堵の息を吐きながら足早にオフィスから出て、廊下で待っていた日高さんに頭を下げる。