イジワル上司の甘い毒牙

「おはようございます、日高さん」
「おはよ、佐倉さん。仕事中だった?」
「いえ。ちょうどキリのいいところでしたから」


顔を上げると、いつどの角度で見ても美しい造形の顔に上品な微笑みを浮かべて、日高さんが私を見下ろしていた。

ばっちり視線が合ってしまって、にっこりと口角を上げて輝きを撒き散らして笑顔を見せるから、その眩しさに思わず私は目を瞬かせた。

日高さんの顔面偏差値の高さに圧倒されている私をお構い無しで、日高さんは小脇に抱えていた書類の入ったファイルを私に差し出してきた。


「先日のプロジェクト案、上からも許可が降りたから、あのまま企画を進めていくことになったよ」
「え、本当ですか?」


日高さんのプレゼンの力が圧倒的に強かったんだと思うけど、それでも私の企画の内容が悪くは無かったんだと認めてもらえた気がして、嬉しい。

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