イジワル上司の甘い毒牙

「それで、事実上は佐倉さんがプロジェクトリーダーということになるけど、大丈夫?」
「が、頑張ります……」


入社して、二年。初めてプロジェクトリーダーになるから、正直不安だらけだ。


「何かあったら、小さなことでもいいから言ってね。俺ができることなら協力するよ」


そんな私の不安を察知したのか、日高さんは子供に言い聞かせるような優しいでそう言った。

一人じゃない、と安心感と同時に迷惑を掛けてしまう罪悪感で、私は眉を下げた。


「でも、部署が違いますし……」
「企画営業と企画事務なら似たようなものでしょ?大元の所属は同じだし、気にしなくていいよ」


ここは日本、いや世界で見てもトップには入る飲料メーカーブランドの会社。

世界有数の企業なだけあり会社の規模は凄まじく、従業員数も膨大な数だ。部署の中にまた細分化された部署があり、それぞれ担当を明確に区別することでスムーズに業務を回している。

とはいえ部署内で完全に業務が差別化されているわけではないので、日高さんほどの人になれば、企画部のことについて知らないことはほとんどないだろう。

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