イジワル上司の甘い毒牙

「……佐倉さん、今のはダメだよ」
「え、あ、す、すみません!?」


静かな声で言われて、怒らせてしまったかと慌てて謝罪の言葉を口にする。

しかし、怒っている様子はなく、むしろ日高さんは恥ずかしかったのか、顔を赤くして口元を押さえた。


「日高さん……顔赤」
「ごめん、見ないで」


空いた方の手で目を塞がれてしまって、日高さんの表情は見えないけど、きっとまだ顔が赤いはずだ。

何が恥ずかしかったのかは分からないけど、怒っていないならそれでいいだろう。


「それでね、開発案を開発部と共同で作成していかなきゃいけないんだけど、佐倉さんはまだ作ったことないよね?」
「は、はい」


一呼吸、二呼吸置いて、手が離れた。

まだ少しだけ耳が赤いけど、いつも通り涼しい顔をした日高さんが、再び仕事の話を振ってきたので、私は背筋を伸ばした。

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