イジワル上司の甘い毒牙
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仕事は早めに進めていくに越したことはない。
何かトラブルが起きて他のことに時間を取られるかもしれないし、プロジェクトの最中に他の急ぎの案件が回ってくることだってある。

不測の事態に備えておけば、困ることも少なくなるし周りにも迷惑をかけない。

そんなスタイルで、私は今まで仕事をしてきたつもりだ。


「……うん。今日はこれくらいかな」


私は時間も忘れてパソコンに齧り付いて、開発案の基盤を作っていた。

本当はこんなに早くやる必要はないけど、来週の会議にかける前に日高さんに確認してもらいたいから。万が一没になっても取り返しがつくようにもしたいし。

開発案のファイルを保存しながら、ふとパソコンの右下の画面に視線を落とすと、定時をかなり過ぎてしまっていることを今知った。

顔を上げて周りを見ると誰もいない。集中し過ぎてしまった。

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