イジワル上司の甘い毒牙
曖昧な記憶

目が覚めて一番に目に入ってきた整った顔に、悲鳴を上げたかけた。

そういえば日高さんの家に泊まったのだと、寝起きで働かない頭をなんとか動かして思い出す。
まだ寝息を立てる日高さんを起こさないようにと、私の肩に回されていた腕をそっと退ける。

カーテンの隙間から漏れる朝日を見上げて、台風が過ぎ去ってしまったことを察する。

今日も仕事かと思いながら身体を起こそうとすると、腹部にずっしりと重みがあることに気が付いて目を白黒させた。


「あ……えっと、諭吉くん」


私のお腹の上で尻尾を振る真っ白な毛並みの猫を見上げて、名前を呼ぶ。それに応答するように、猫は小さく甘えた声で鳴いて、無意識に伸ばしていた私の手に頬を寄せた。

寝る前までは、リビングの猫用のソファで丸くなって寝ていたことを記憶している。

寝室の扉が少しだけ開いているのを見るに、どうにかして自分で開けてここまで来たらしい。

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