イジワル上司の甘い毒牙
「顔が赤いよ?何でかにゃあー?」
「や、やめ……!」
日高さんは猫を抱えたままにやにやと意地悪く笑いながら、猫の肉球を私の頬に押し付けてくる。
諭吉くん、ちょっと迷惑そうな顔してる。
「ほらほら、触ってもいいんだよ?」
「くっ……!」
そのまま日高さんは、触れるものなら、と言わんばかりに猫を両手でホールドして私から遠ざけた。
猫に触れるには日高さんに接近しなくてはいけない。
「……わかっててやってます?」
私がジト目で日高さんを睨み付けると、日高さんはにっこり笑って首を傾げた。
「なんのことかな」
それは、それ以上の追及を許さないとでもいうような響きだった。
優しく穏やかな雰囲気でありながら、どこか漂う威圧感に何も言えず、私は唇を尖らせて、猫の頭に手を伸ばす。
その綺麗な毛並みに指先が触れる寸前で、手首を掴まれた。