イジワル上司の甘い毒牙
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「うん。この開発案、いいですね。ほとんど手直しが必要ないくらいの完成度ですよ」
七階の一番奥に位置する、第三会議室。
そこに営業部、企画部、開発部のプロジェクトメンバーが二名ずつ集まり、私が作成した開発案に目を通していた。
ダメ出しをされるのではないかと内心ソワソワしながら返答を待っていると、開発部のリーダーである女性がにっこりと笑って資料から顔を上げた。
「良かった……」
ほっと胸を撫で下ろすと、女性は利発的な眉を釣り上げ、真剣な顔をして全体に語りかけるように声を張った。
「あとは実際に開発していかないと何とも言えないですけど……とりあえず、この案を元に来週までにサンプルを作って提出します」
「えっ!そんなに早くできるものなんですか?」
順調に進んでいく新商品のプロジェクトに、思わずそう声を上げると、恐らく女性と同じく開発部のメンバーであろう、隣に座っていた男の人が淡々と答えた。
「うちは優秀な人材がたくさんいますから」
よく見ると、その目の下にはうっすらとクマが見えた。