イジワル上司の甘い毒牙

「……む、無理はしないでくださいね……」


他の部署のことはわからないけど、やっぱり開発部となると忙しいんだろうか。


「それでは、本日の会議はここまで」


形式上、議長である日高さんの解散を告げる声と共に一時間弱の会議が終わり、次の仕事が控えている営業部と開発部の人達は足早に会議を後にした。

日高さんと二人残された室内で、私は資料を片付ける彼に向かって、そっと声を掛けた。


「ありがとうございます。日高さんのお陰で、上手くいきました」


書類を束ねる手が、一瞬だけ止まった。


「過去の資料を参考にしたとはいえ、あそこまでのクオリティで開発案を持って来たのは佐倉さんが初めてだったよ。君をプロジェクトリーダーに推薦して良かった」

「あ、ありがとうございます」


かえって俺の資料が邪魔にならなかったかな、と苦笑いする日高さんに、とんでもない、と私は首を横に振った。

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