イジワル上司の甘い毒牙
堕ちておいで
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日高さんの携帯番号が書かれた紙切れを前に、私は唸り声を上げていた。
「どうしよう……」
結局、連絡先を教えてもらったけど、私がその番号にかけることもなく、お互いに別の仕事が立て込んで会社でも会うこともなく、週末になった。
その日の夜のうちにかけておけば、連絡先を教えてもらったので義理として、など適当な理由をつけてかけることもできた。
しかし、あの日の夜、私は「何で私が日高さんのプライベート用の携帯に電話しなきゃいけないんだ」と見事にひねくれを発揮し、そのまま寝てしまった。
――そう。完全に電話をかけるタイミングを逃したのだ。
今更なんて言って電話したらいいのか、なんて考え込んでいると、紙切れの横に並べていたスマートフォンが震えた。