唯少女論
唯少女論 第2話 「思いはきっと届かない」
朝の匂い。
大きな窓から差し込む太陽。
焼きたてのフレンチトースト。
遠くからかすかに流れてくる海の気配。
年の離れた兄が煎れてくれたコーヒー。
高校生なのに姉からただようオトナの色気。
店の中にゆっくりと響くクラシックのメロディ。
いつものモーニングを食べに来たお客さん達の優しい会話。
そんな心地よい静けさを壊す、オンナの声。
「ちょっと凌介《りょうすけ》。私にもコーヒーちょうだい」
窓越しに見える庭の緑とは対照的なケバケバしい服を来たオンナ、それが私達の母親だ。
「こっちに来るなよ。家のほうで待ってろよ」
そのヒトが放つオンナのいやらしさとお酒の臭いが、私は嫌いだった。
「凌介ひどーい。母親に向かってそんな言い方ないでしょ」
食事を終えてコーヒーを飲んでいる姉に併せて早く出ようと思っていた私は残っていた大きめのフレンチトーストを口に押し込んだ。
「美鈴《みすず》とかりんもそう思うでしょ?」
「さあ? 凌兄ごちそうさま」
「ちょっと美鈴!」
姉は長い黒髪を揺らしながら母親を相手にもせず店を出ていった。
「何なのよ。ねえ、かりんはそう思うでしょ?」
私はミルクいっぱいのコーヒーで口の中の物を流し込むと何も言えずに姉のあとを追う。
大きな窓から差し込む太陽。
焼きたてのフレンチトースト。
遠くからかすかに流れてくる海の気配。
年の離れた兄が煎れてくれたコーヒー。
高校生なのに姉からただようオトナの色気。
店の中にゆっくりと響くクラシックのメロディ。
いつものモーニングを食べに来たお客さん達の優しい会話。
そんな心地よい静けさを壊す、オンナの声。
「ちょっと凌介《りょうすけ》。私にもコーヒーちょうだい」
窓越しに見える庭の緑とは対照的なケバケバしい服を来たオンナ、それが私達の母親だ。
「こっちに来るなよ。家のほうで待ってろよ」
そのヒトが放つオンナのいやらしさとお酒の臭いが、私は嫌いだった。
「凌介ひどーい。母親に向かってそんな言い方ないでしょ」
食事を終えてコーヒーを飲んでいる姉に併せて早く出ようと思っていた私は残っていた大きめのフレンチトーストを口に押し込んだ。
「美鈴《みすず》とかりんもそう思うでしょ?」
「さあ? 凌兄ごちそうさま」
「ちょっと美鈴!」
姉は長い黒髪を揺らしながら母親を相手にもせず店を出ていった。
「何なのよ。ねえ、かりんはそう思うでしょ?」
私はミルクいっぱいのコーヒーで口の中の物を流し込むと何も言えずに姉のあとを追う。