唯少女論
リアリティのないリアルで私を癒してくれるヒトを見付けた。
唯理さん。
初めて私が唯理さんを知ったのはあの花壇だった。
世話をするヒトがいなくなって雑草が生《は》えていた花壇を美術部の顧問に頼まれたのは二年の春だった。
私が花壇で作業をしている時間、彼女は決まって短距離の練習をしている。
少し離れた場所でもわかるくらい背が高くて手足の細い彼女は走るととても速い。
きっと私の倍は速い。
そんな彼女が時折遅刻をしてくる。
その時は校庭を走る彼女が花壇の前を通る。
首までの長さに短く切りそろえられた黒髪。
切れ長の目が一瞬私を捉えるけれどすぐに前を向く。
彼女は風だ。
強く吹く時もあれば、凪《な》いでいる時もある。
そして、私には無関心だった。
その彼女が三年になった今年の春から私の存在に気が付いた。
同じクラスになってもグループが違うせいで話すことはなかったけれど、視線が合うと会釈をするようになった。
それでも私の友達のシャルとはああやって話しているのだから、私にも話す機会もあったはずだ。
なのに話せずにいたのは私の弱さかもしれない。
唯理さん。
初めて私が唯理さんを知ったのはあの花壇だった。
世話をするヒトがいなくなって雑草が生《は》えていた花壇を美術部の顧問に頼まれたのは二年の春だった。
私が花壇で作業をしている時間、彼女は決まって短距離の練習をしている。
少し離れた場所でもわかるくらい背が高くて手足の細い彼女は走るととても速い。
きっと私の倍は速い。
そんな彼女が時折遅刻をしてくる。
その時は校庭を走る彼女が花壇の前を通る。
首までの長さに短く切りそろえられた黒髪。
切れ長の目が一瞬私を捉えるけれどすぐに前を向く。
彼女は風だ。
強く吹く時もあれば、凪《な》いでいる時もある。
そして、私には無関心だった。
その彼女が三年になった今年の春から私の存在に気が付いた。
同じクラスになってもグループが違うせいで話すことはなかったけれど、視線が合うと会釈をするようになった。
それでも私の友達のシャルとはああやって話しているのだから、私にも話す機会もあったはずだ。
なのに話せずにいたのは私の弱さかもしれない。