唯少女論
担任の先生が私の持ってきた資料に目を通している。



「ここに、ほんとうに誘われてるの?」



「はい。この前のコンクールの時に」



「この前? ああ、審査員特別賞の。なるほどね」



「学費の面でも力になっていただけるみたいで」



「確かにここにいるよりはアナタの才能を伸ばせるか。ご家族とは話したの?」



「はい、話しました。兄も姉も納得してくれました」



「そう。———わかった。細かい手続きのことはあちらの方と話して進めておくわ。問題がなければ9月からということになるけど、ほんとうにいいの?」



「はい。もう決めたので」



「わかった。みんなにはいつ伝える?」



「まだ伝えなくていいです。先に伝えたい友達がいるので」



そう。



私のたった二人だけの大切な友達。
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