たとえ叶わぬ恋だとしても
彼に本当の笑顔で笑ってもらうには……


私にできることは何か……



私がそう考えあぐねていた時……あの子が現れたんだ


望宮葛華(モチミヤ クズハ)


彼に光を与えた子



彼女は彼の隣にいるだけなのに、彼を和ませることができる


その存在が、最初はとても疎ましかった


なんとかして彼から離れさせたいと思った


けれど、そんなことできなかった


あの子の純粋で素直な心を傷つけるなんて、私にはできなかった


それに、彼女に向ける彼の笑顔が心からのものだったから


それを奪ってしまうなんて、本末転倒だ




───ねぇ


……私、気付いたんだ


私が本当に好きなのは、あの子の隣で心から笑うあなただってことに


私があなたの隣に並んでも、あなたはきっと、そんなふうには笑ってくれない



だから私は、ただただ、あなたの幸せを願っています



頬を伝った雫は、あなたに伝わることのない、伝えることもない私の想い



机の上に置かれたアイレンの花を優しく撫で、ふっと笑みを零した


儚げに、切なげに……
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