繋がる〜月の石の奇跡〜
「私、関谷くんと大谷さんの様子見てくるね。」

ベッドの横に座っていたあずさが立ち上がって言った。


「あずっ!私、もう大丈夫だから家に戻るよ。」


えみは、あずさを引き止めて言った。


「そう?分かった。」


あずさが玄関のドアを開けると、部屋の前には大谷と関谷が缶コーヒーを飲みながら話をしていた。


「えみちゃん。」


大谷は安心した顔でえみを見た。


「もういいの?」


下を向いて気まずい態度でいるえみに大谷が優しく話し掛ける。

「はい。色々ありがとうございました。迷惑掛けてすみません。」

えみはゆっくり顔を上げて、大谷の目をしっかり見つめてお礼を言った。


「熱、さっきより下がったみたいだね。」

大谷は、えみに近付き、額に手を当てた。

「‥‥。」


大谷に突然触れられ、恥ずかしくなってえみの顔がどんどん赤くなる。


「もう大丈夫です。家に戻りますね。」

えみは、少し後ろに下がって大谷の手が離れるようにし、向かいにある自分の部屋に体を向けて一歩踏み出した。




その瞬間、大谷がえみの手首をパッと掴む。


「‥‥」

えみは、驚いて大谷の方に振り向く。


「あ‥‥ごめん。ゆっくり休んでね。何かあったら、いつでも連絡して?」

大谷は、自分の衝動的な行動に戸惑いながらも、冷静に落ち着いたトーンで話した。


「ありがとうございます。」

えみは、小さく会釈して自分の部屋へと向かった。

するりと離れたえみの手首の感触が、大谷の心をざわつかせていた。
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